ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
芹霞が何か話しかけて笑っている。
多分俺は返事している。
それは…まるで夢の中のようだ。
芹霞。
芹霞。
全て忘れて引きずり込まれそうになる。
全てがどうでもよくなる。
触れる処が熱いんだ。
触れた処から、
何かが溢れ出しそうなんだ。
いや…もう――
俺の中から、溢れてきているのか。
ただ触れただけなのに、
それだけで俺は――。
オボレテイク…。
「うん、ありがとう、煌」
その声に、はっと我に返った。
にっこりと笑う芹霞に、
ずきん、と心が痛んでしまう。
罪悪感を感じてしまう。
だから――
『ふふふ。
解放してやろうか、BR002』
心の中に聞こえてきたその声は。
その誘惑の声は。
『心のままに、動いてはみぬか』
俺の願望の声だと思ってしまったんだ。
誰に遠慮することなく、堂々と。
唯一人の"男"として。
櫂みたいな立ち位置で。
芹霞に触れたいと。
芹霞を独占したいと。
もしそれが叶うのならば…。
今の俺から。
ちっぽけすぎる今の俺から。
解放されたい――
そう…
思ってしまったんだ。