ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
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ロイヤルホテルの外界に広がっていた景色は――


「何このゾンビだらけ!!!」


虚ろな目をした屍の群れに覆い尽くされていた。


爛れた顔。

骨が見える、損傷の激しい体。


あたしは思わず…その場で吐いてしまった。



陽斗はそんなあたしの背を摩りながら、取り囲んで餌にしようとする、血色の薔薇の痣(ブラッデイ・ローズ)の喉を裂いている。


真紅色に切り裂く銀の光。


金と一対のその色は――

久しぶりに見る陽斗の武器の色。


愛しそうに撫でる血塗られた鉤爪に、

まがりなりとも陽斗の"狂気"を感じてしまったのは、


恐怖故の幻覚なのだろうか。


銀色を舌で舐めながら、

真紅の返り血を浴びてきらきら輝く金色は。


残虐な光の中で美しく輝いて、

あたしは思わず目を細めた。


陽斗はこうした闘いに慣れているのだろう。


この処元気のなかった陽斗の顔を思えば、活き活きとしているこの顔は、かなり複雑だ。


罵るつもりはないけれど、それでもあたしと"同じ側"で生気を取り戻してもらいたいと思うのは、自己中心的な思いなのか。


玲くんが手こずったあの血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)は、抵抗を返す間もなく、鉤爪によって血色に沈んでいく。


陽斗の周囲には――

山になった血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)。


それでも襲い掛かる数は、減ってはいない。

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