ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「この鉤爪が血に沈む時、その血を媒介として、再生する細胞を無効化させる。つまりは、俺の細胞と正反対の働きをするもんだ。
俺が氷皇と組んだ時、あいつから貰った代物だ」
そんなにお気に入りなのか。
語る陽斗は嬉しそうで。
だけど――
「これがあれば、
いつでも死ねるだろ?」
あたしは絶句してしまった。
それは"今日のご飯はハンバーグ?"と聞かれているかのような軽いノリで。
しかも血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を消している最中に。
陽斗は――
生きるのが辛かったのか。
「俺は昔からいいように利用されてきた。折角見つけた緋影の仲間も利用されて。だから他の緋影が俺のようにならねえように護りながら、紫堂を殺した後に命絶つ予定だったが、紫堂を殺れずにいる俺は、まだ生きている。仲間である緋影を敵にして今尚生きている。
だけどよ――。
そんな俺も、
いい気もしてるんだ」
哀しげに向けられたその金の瞳。
「当然。生きてりゃ人生変わるから」
あたしが親指を突き出して笑うと、陽斗はぎゃはははと笑った。
「さて、芹霞ちゃん。
俺らは何処へ向かおうよ?」
あれから。
玲くんや櫂に電話かけているけれど、電話が通じない。
電波使いの玲くんのことだから、仕方がないかもしれない。
櫂達が渋谷に居るというのなら、渋谷に近づくのがいいのかもしれない。
早く合流したい。
とりあえず、一番近い駅に向かう。
あたしでもよく判る駅は有楽町駅だ。