ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「何……これ?」
日比谷から有楽町に抜けると、
有楽町駅は破壊されていた。
電車は止まっている。
線路に見えるのは横倒しの列車。
血に染まった無機質の車体は、
唯の事故じゃないことを物語っている。
救助に駆けつけたらしい支援部隊も、乗り物を残したまま乗り手は居ない。
奇妙な程、静まり返っている。
閑散としている。
線路伝いを歩けば、"新橋"駅にすぐ出たが同様の有様だった。
あたし達は構内に潜り、地下に入ってみた。
人間が居ない。
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)も居ない。
奇妙すぎる静けさにあたしは目を細めた。
「計画は順調か。一度に山の手線が全周爆破された。そして押し寄せた血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)がここいらの連中を引きずり込んだんだな。皆一同に紫堂櫂のいる渋谷に向かっているはずだ」
「どうしたら止めれるの!!?」
「落ち着けって、俺の首絞めるなッッ!!! いいか、あいつら4人は普通じゃねえ。しかも紫堂玲の結界に保護され、あのコスプレ女も暗躍している。橙色の飼い犬と黒の糸遣いの持つ武器は、俺の鉤爪と同じだ」
「同じ……って」
「俺はあいつらのような守護石はねえが、これから顕現させるか、既に顕現しているかの違いだ。俺の鉤爪も、あいつらの武器も元々は五皇から与えられたもの。俺は氷皇、あいつらは紅皇。まああいつらは与えられたというよりも、教えてもらったという方が正しいがな。
そこに元老院の意思があったのかは知らねえが、しかも他2人は紫堂だ。その力とあわせれば、そう簡単にはくたばらないだろうさ」
簡単にはくたばらなくても、
何れかはくたばるということだろうか。
あたしは押し黙った。