ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


どうして?


何で?

いつから?


相手間違ってない?

寝ぼけてる?


疑問系ばかりの思考の嵐。


何も反応できないあたしに、

微かにくすりとした笑いが聞こえた。



『好きだよ。


――僕達、全員』



ああ、そういうことか。

そうだよね。


そういう意味だよね。



安心と同時に微かな残念感。


判ってはいるんだけれど。


玲くんにとってあたしはお子様。


温かい家族の一員で、

あたしは恋愛対象じゃない。


玲くんにとって大事な櫂の幼馴染だから。


ただそれだけ。


だけど。


御階堂の時とは違って、

あたしはドキドキしてしまった。


玲くんの"S"に、惑わされてしまったのだろうか。


ふと思った。


玲くんが、その破壊力満点の声音で、

王子様のような優しげな美貌とその微笑で

迎えに行くお姫様はどんな女なのかと。


それはきっと絶世の美女で。

玲くんよりも遥かに女らしくて。


そんな女(ヒト)を、玲くんは好きになるだろう。


所詮あたしは庶民の平凡女で。

乱暴者だし直情径行で、我侭で。

恋愛なんてしたこともないし。


玲くんが選ぶだろう"女の中の女"は、

本当に羨ましいと思ってしまった。



あたしの大好きな人達。


彼らは幸せにならないといけない。

あたしが、幸せにしてあげたい。


あたしは、女らしくないけれど、

あたしはあたしの方法で幸せにしたい。


切実にそう思う。


あたしはあたしを犠牲にしても、

大好きな彼らを護りたい。


それがあたしの"運命"なのだから。

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