ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


金色が血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)と制裁者(アリス)と対峙している。


あたしの元に行かせないとしている。

その確固たる意思と、その雄姿に。



「陽斗、大好きだよッッ!!!」



そういうしか出来なくて。



「うるせえよッッ!!!」


陽斗の"俺もだ"という答えは期待していなかったけれど。


それでもよろけた陽斗の姿に微かにあたしは笑い、

そして涙を流した。


改札口は目の前だ。


――後で必ず追いつくから。


あたしは陽斗を信じている。


信じようと…思った。


ひたひた、ひたひた。


1人歩く地下鉄の線路。


地下鉄は止まっているようだ。

誰もいない。

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)……"生ける屍"もいない。


これから何が起きるんだろう。


あたしは不安になりながら、冷たい線路を歩いて行った。


ひたひた、ひたひた。


地下鉄はこんなに暗くてじめじめしていた場所だったろうか。

進行方向が、本当に櫂達の場所に繋がっているのか判らない。


もし此処で。

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が襲い掛かってきたら。

あたしは一瞬で血の塊だ。


そしてあたしも血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)となり、櫂達を襲う集団の一人となってしまうのだろうか。


背筋に走るおぞましさにぶるぶると震えながら、ただひたすら闇に消える線路を歩き続ける。


行けども櫂達の気配がない。


"虎ノ門"を抜けた時だ。


ぼんやりとした明るさがあった目の前が、突如暗闇になったかと思うと、青い光がふわふわと浮かび始めたのは。


人魂かと、思わず驚いて声を上げた時、


「芹霞ッッ!!!」


必要以上に声を荒げた櫂に。

突然包まれた櫂の温もりに。


「櫂~~ッッ!!」


あたしは櫂にしがみついて泣きじゃくってしまった。



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