ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
やがて、玲様の指揮下の警護団、その頂点である警護団長職を父から引継いだ時は、当然、櫂様の警護を任せられるものだと思っていた。
代々の警護団長がそうであったし、そうなるだけの自信はあった。
警護団の部下は私よりも遥かに年上であるが、実力では私に敵う者は居ない。
――俺の警護は、煌をつける。
ありえなかった。
どこの誰かも知らない外部の者が、櫂様に警護団の規則を捻じ曲げさせてまで、イレギュラーで、私と同格の地位が与えられたのだ。
――あ!!!? 何だよこのチビ!!!
見るからに、頭の悪そうな橙。
殺気を放つ、荒んだ目。
私に劣る、荒々しいだけの戦闘技術。
ありえない。
再三に渡る私の訴えは、櫂様にも玲様にも却下された。
なぜあそこまで、あの馬鹿蜜柑は必要とされる?
あの男の"生い立ち"を知って尚も、2人はあの馬鹿蜜柑を優遇した。
配下には、学識など必要ない。
だから私も学校というものに行ったことがない。
警護出来るだけの力があればいいから。
力こそ全てだから。
それなのに、あの男だけは特別待遇で。
本当にありえないことだった。