ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
火照った顔を隠すように俯いて、
「コスプレ王子様だね、櫂は。
その服が正装なの?」
じろじろと櫂の衣装を眺める。
なんというか――
似合いすぎているような。
由香ちゃんが喜びそうだ。
普段、制服だの家着だのは見慣れているけれど、
スーツでもなく…本当に日本の国の衣装かと思う服は、異国の騎士を見ているかのようで。
櫂の纏う漆黒の色と似合いすぎて。
黒さが眩くてたまらなかった。
櫂は益々その美貌を惜しみなく発揮している。
その櫂に抱かれ、お姫様と呼ばれるあたしは、ボロボロのドレスを思って思わず嘆いた。
不釣合い。
「お前さ。今回は仕方がないが、絶対そういう格好するなよ」
ああ、櫂も不釣合いだと思っている。
恥ずかしいと思っている。
「どこもかしこも露出度多くて。
これ以上、厄介な恋敵増やすな」
何とも理解しがたい言葉を頂いた。
理解を求めたその先は、
「眼の毒だと言っている。
何だよ、その短い丈。
その開いた背中。
そんなに俺を煽りたいなら、
後でゆっくり煽られてやるから」
「は?」
ざわり、と防御本能が騒いだ。
「今は眼を瞑るから。不穏な2つのオーラが酷いから、仕方がないからもう行くぞ」
何だか一人勝手に自己完結してしまった櫂は、あたしを軽々と持ち上げてホームを登った。