ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
赤坂は私達の戦場となる。
飛び散る血飛沫。
猛る咆吼。
玲様の結界に護られて、私も裂岩糸を操る。
私が裂いているのは――
人なのか、それともモノなのか。
意思なくして動かされるモノ。
それは人の形をしているだけにしか過ぎず。
同じ人間であった"仲間"に襲われ、人としての名残を見せぬ歪な輪郭になっても尚、人として安らかに逝く事すら許されず、罪だけを他に伝播させる現状。
こんな姿は…嫌だ。
こんな姿で、もしも仲間を…櫂様達を襲うくらいならば、今此処で自決した方がマシだ。
こんな姿は…惨めだ。
数多くが倒れて消滅していくが、数は減じた気がしない。
「……どうしようか、櫂」
バリバリバリ。
玲様が紫電を血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に向けながら、櫂様に問うた。
焦げ付く匂い。
櫂様は手から放たれる薄緑の光を纏い、それらを纏めて風で薙ぎ払う。
その威力は…凄まじい。
それでも…相手の数は多すぎて、空いた隙間が埋められていく。
櫂様は、片手で芹霞さんを抱きながら、延々と取り囲んでくる周囲を見渡し、そして言った。
「元老院の住処へ行く」
と。