ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
 
「呪詛の最終目的が東京破壊なら、その被害を被らないように、元老院も手を打っているはずだ。

恐らく、東京の中で一番霊的にも物理的にも護られて、頑強な場所は――四谷にある元老院のあの住処しかない。

元老院は遅かれ早かれ、最終的には其処に移動してくるはずだ」


「元老院を相手取れば、後はないよ?」


「判っている。だがその覚悟はお前だって同じだろう、玲。これは紫堂に売られた喧嘩だ。血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が藤姫という元老院によって作られた存在なら、あの女をどうかしないとこれは終わらない。

まだ3時にはなっていない。3時に何かが起きるというのなら、予測不能事態に陥る前に、何とかしたい。

俺だってみすみす命をくれてやるものか」


そう櫂様が不敵に笑ったら、


「なあ櫂。お前は紫堂の"次期当主"だ。もう個人の問題ではない。赤坂がこの有様なら、紫堂本家に行った方いいんじゃないか?」


玲様は苦笑した。


「何をしに? 仮にも偉大なるご当主……親父殿がいる家だ、こんな不出来な俺が駆けつけるまでもないだろうよ。あれだけでかい面して、紫堂をのさばってるんだ。

せいぜい俺に"口だけだ"と言われないよう、その実力というものをいかんなく発揮して貰おうさ」


何だかとても棘のある言い方で。


「お前も存外に、いい性格してるよな」


玲様は思いきり笑い、私までもつられて口許を弛めてしまった。



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