ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




その彼女が――

あの馬鹿蜜柑を変えた。



紫堂にとって好ましくない方向に、あの馬鹿は丸く変わった。


立場をわきまえず、主である櫂様と対等に立とうとしている。

……無意識に競っている。


それすら気づかぬ愚かな蜜柑。

その蜜柑を好んで傍に置く櫂様。
 
気づいているのに、黙視の玲様。


だから、あの橙色が目に入ると、無性に腹立たしくなってくる。

あの能天気な腑抜け顔を見ると、この上なく苛々ばかりが募る。



私は――変わらない。




何が一番大事か判っているから。


だから私は――

「男」を捨て「色」を捨てた。


不安愁訴など持ってはいけない。


これは私の抵抗。


紫堂以外では生存価値がない私の――。

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