ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


今でさえ…辛いんだ。


それでも耐えているのは、

未来に期待しているから。


未来に続く今を、だから忍んでいる。


出来るなら今すぐ、今ここで。


俺のものだと刻印をつけたいくらいで。



俺は――


自分のことで精一杯過ぎて、

芹霞の心情を考えていなかった。


平行線のままの関係を、少しでも寄り合いたくて。



「!!!」


そして気づく。



ぽろぽろと流れ落ちる涙。

傷ついたような悲愴な顔。



俺の言葉は、彼女を傷つけてしまっていた。


深く、深く…深淵まで。



「芹霞、俺が言いたいのは……」



慌てて差し延べた手は――



「馬鹿櫂ッッ!!!」



振り払われた。



「うああああああん!!!」



芹霞は泣きながら、駆け出してしまったんだ。



「ちょ、お前何処へ行く!!?」


ここは敵陣だ。


俺は焦って走り、芹霞の腕を掴んだ。



「やだやだやだッッ!!


離せーッッ!!!」



芹霞は唇を噛んで、俺を睨んだ。

大きな目から、涙をぼろぼろ零したまま。



多分俺は――

情けない程おろおろしているだろう。



頭では判っている。


何とかしないといけない。

何とか誤解を解かなくては。


「約束したのに。あたし達はこのままずっと"永遠"だって、あんなに約束したのにッッ!! 

だからあたし、櫂が紫堂に行っても…どんなに寂しくてもずっと我慢していたのにっっ!!! 


裏切り者ッッッ!!」



そして座り込むとうわああん、とまた泣き始めてしまった。



"裏切り者"



「芹霞、誤解だ。

違うそんな意味じゃないんだ。なあ……」


「うああああん!!!」



何とかしないと。

何とかしないと!!!

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