ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


焦れば焦るほど、どうしていいのか判らなくて。

ただ俺は必死に、芹霞に訴える。


「聞け、頼むから…俺の話を「うあああん!!!」



俺の方が泣きたい。


拒絶。

何処までも拒絶の涙。



――芹霞ちゃあああん!!!



どうしたらいいんだ。

どうしたら…判って貰えるんだ?


ここまで傷ついて泣く芹霞を見たことがない。


傷つけたのは俺。


その事実がまた、俺を狼狽させる。



――芹霞ちゃあああん!!!



言えたのなら。


好きだと、愛していると…

そう言えたのなら。


――はい、父上。約束します。


俺は…自分の言葉に雁字搦めになって、こんな時ですら…逃れきることは出来なくて。


どうしていいのか、ただ焦るばかりで。



「せり……か…」


震える小さな体。

抱きしめれば…伝わるだろうか。


俺の恋心故の言葉だと…伝わるだろうか。



俺は…裏切ってなどいない。


昔から…一途に、

お前を想い続けている。


震える俺の手。


躊躇(ためら)いがちに伸したその手を、


「!!!?」


払いのけるように、間に割り込んだのは――


「……芹霞!!!?

何泣いてるんだよ!!?」


駆け寄ってきた…慌てた顔の煌だった。


俺は…煌の影となる。

太陽のような…鮮やかな橙色の影に。



「おい、芹霞!!!?」


煌は、身を屈めて芹霞の顔を覗き込むと、


「煌、煌…うああああん!!!!」


芹霞は、泣きながら煌に抱きついた。



「どうしたんだよ、芹霞!?」



愛しそうに後頭部を撫でる煌に――


「………っ!!!」


じり、と胸が焦げる。




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