ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


誰もが激しい感情に支配されていく。


最初は煌。

次は玲くん。


櫂に対して、敬意と友愛で結ばれていた彼らは、櫂に反抗するような態度を見せた。


その次は――あたし?


あたしは、少し前までの…皆の強張った顔とぴりぴりした空気が嫌で。

乖離したような…皆の心が居たたまれなくて。


それを何とかしなくてはと、だからあたしは、陽斗のぎゃはぎゃはを聞こうと思ったんだ。


陽斗は、あたしにとっては盟友で、相談相手で。

陽斗になら、この場をよくするアドバイスがもらえるかもしれない。


とにかく、いつもの和やかさが欲しかったから。

それが必要だと思ったから。


だけど、櫂に携帯を奪われてしまった。


皆を頼れないから、陽斗を頼りたいと思うのに、櫂はあたしを凍て付くような眼差しで睨みつけ、場の改善を試みたいあたしを非難する。


だから――

冷たい櫂にむっとして、玲くんに携帯を借りるとあかんべをしたんだ。


叩いてしまった憎まれ口。

止めればよかったのに。


そうすれば――


「なあ――

いい加減、幼馴染は卒業しないか?」


そんなことを、真剣な顔でいわれなくても済んだのに。


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