ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
今の櫂は嫌い。
あたしを必要としない櫂なんて嫌い。
あたしとの永遠を求めない櫂なんてあたし要らない。
「芹霞、誤解だ。違うそんな意味じゃないんだ。なあ……」
言い訳なんて聞きたくない。
嫌だ。
櫂の傍に居るのが嫌で仕方がない。
あたしが居たいのは8年前の櫂。
あたしを心底好きでいてくれた櫂。
絶望。
絶望。
視界は真っ黒に染まる。
今の櫂の漆黒色に染まる。
助けて。
誰か助けて。
絶望の闇から…誰か助けて!!!
「芹霞。何泣いてるんだよ!?」
手を差し伸べてくれたのは、煌だった。
闇の中に輝く橙色。
あたしは思わずその光に縋った。
「どうしたんだよ、芹霞!?」
もう、あたしは何もいえなくて。
うぐうぐとしか発音できなくて。
煌が小さく囁いた。
「芹霞――
櫂が嫌なんだろう?」
掠れた声に、あたしは小さく頷く。
「追い払ってやるよ、お前から。
俺――…
お前を奪うから」
その時あたしは…
その意味が判らなかった。