ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「煌、どうしちゃった?」
何でもないような口調に努めながら。
何でもない、いつもの態度を待ち望む。
だけど――。
「どうしたもねえよ。
お前を俺のものにしたくて、
体が……疼くんだ」
煌の、熱く…切なげな息遣いが首元に落ちた。
熱い唇を首筋に感じた時、あたしの身体は意思とは無関係にびくりと震え、思わず身を捩じらせた。
だけどその動きは、大きな煌の身体の中では、頭を傾けただけに過ぎず。
煌は一際大きな吐息を零すと、あたしの耳を軽く歯で噛んだ。
驚きと刺激に震えたあたしを抑えつけ、煌は執拗にあたしの耳朶を舐め上げてくる。
湿った…卑猥な音を響かせながら。
あたしは悲鳴のような…途切れ途切れの声を漏らした。
「こ、煌……やめっ…ね、…やめっ…」
懇願のような弱弱しい声を物ともせず、煌の唇は耳元と首筋とを往復する。
その動きは巧みで。
あたしから、力と思考力を奪っていく。
切なく、身体が疼いてくる。
「やっ…んッ……煌…っ!!」
逃れようとしても逃れきれない。
煌が――
煌の匂いが…
あたしの中に充満していく。