ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「お前――可愛いな」
耳に、艶やかな声が広がった。
「俺で…感じているんだろ?」
甘く、そして嬉しそうな声。
「すげえ、心臓。
なあ――…
今すぐ、俺のもんにならね?
俺、我慢できそうもねえよ」
声の響きは、あたしを惑わす妖しげなもので。
その響きが、鼓膜を刺激した時。
あたしの鼻に――
あたしの嫌いな女物の香水の匂いが漂った気がした。
煌は――
女慣れしている。
決して本気にはならない、一夜の相手。
ただ体の欲を満たすだけの、ひとときの相手。
あたしも――
同じレベルか。
香水女達と…同じ扱いか。
「あたしを……」
心臓がぎゅっと掴まれた気がした。
苦しい。
匂いにむせ返る。
「そんな女と一緒にするな、
馬鹿犬ッッ!!」
あたしは思い切り、煌の頭に頭突きをした。
それでも煌は動じずに。
そして――気づく。
「この……馬鹿力……」
いつの間にか煌は――
片手をあげて…
桜ちゃんの首を締め上げていたんだ。