ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
桜ちゃんは、気配を殺して煌に近づき、多分……襲われているあたしを救おうとしてくれたのだろう。
桜ちゃんが。
煌が敵わないと言っていた、
あの紫堂の警護団長が。
煌の……砕けたはずの左手から動けない。
あたしは焦ってその腕に噛み付いた。
途端煌はびくっと体を震わせ、あたしから少しだけ体を離す。
その拍子に手の力が緩められたようで、桜ちゃんは身を捻ると呼吸を整えていた。
煌は桜ちゃんを気にも留めず、あたしを見た。
真正面から向き合う、あたしと煌。
ぎらついた、煌の瞳にあたしは竦んでしまう。
「!!!」
褐色の瞳が――
赤かったんだ。
血色のような真紅の色。
凶々しいその色に…
あたしから血の気が引いた。