ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
私の使命は、篠山亜利栖の動向を探ること。
ここ数日、私は毎日僅かな情報を許に駆けているが、これといった有力な手がかりはない。
キーワードは、篠山亜利栖、ブラッディ・ローズ、黒の書。
私の矜持に賭けて、とにかく早く彼女を見つけ出したい。
綺麗に痕跡を消した彼女は、今何処に居るのか?
紫堂を相手に痕跡を消せる事実が、
単純な事象ではないことを物語る。
たかが小娘相手に、どうして紫堂が狩り出されるのか、正直今回の件は不思議で仕方がない。
それは多分、櫂様も玲様も感じているだろう。
彼女が普通の少女であれば、の話だが。
私は、彼女の行方と、ブラッディ・ローズの意味を2人に訊いてみたが、頭を振った。
「……黒の書、は?」
するとマモルと呼ばれた男は、歪んだ笑いを見せながら、ポテトを口に入れた。
「黒表紙の怪しげな本なら、いっつも大事そうに抱えていたぞ。タイトルなんて興味ないし。つーか、どうでもいいし」
一応、それらしき本はあった…と。
「篠山亜利栖は、ずっとそうでしたの?」
「いんや。1・2年の時は普通の感じだったよな、実?」
「何処にでもいる普通の女。記憶力が異常によくてさ。成績はトップ。それなりに友達もいて、それなりに笑って」
ああ、私が聞いていたのと同じだ。
「それが何故、変わってしまったんですの?」
マモルが答えた。
「んー、タメでさ、結城隼人(ゆうきはやと)っつー、俺からもみてもかなりイケメンな奴が居てさ、あいつじゃねーかな、原因」
「……結城隼人?」
私は、目を細めた。