ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
芹霞しか抱きたくない。
芹霞を抱きたい。
他の女など要らない。
芹霞で満たされたい。
気づいた時には、求める心が強すぎて。
何も言えずに動きを制されている櫂が、それでも自分のものだと公言するのを見ているのがもどかしくて。
僕だったら。
僕であったら。
そんな邪な思いを振り切る毎日。
いつまで僕は苦しめばいい?
櫂が動かないなら――
僕が貰ってもいいんじゃないか。
櫂への罪悪感と恋情に板挟みになりながら、卑怯な僕は考えた。
もし、僕ではなく……
芹霞から惑ってくれたのなら。
全ては丸く収まるのではないか。
邪な想いを押し殺し、優しさと…確信的に"作った"微笑で芹霞を誘ったこともあったけど――櫂でさえ煩悶させる相手が、僕の手に堕ちることはなく。
完全素通り。
僕をすり抜け、その奥の……僕以外の他の"男"のいばらに絡め取られようとする。
櫂だと思った。
だから諦めようとした。
僕が櫂に勝るはずはない。
所詮は報われぬ、ひとときの夢だと。
だけど――
無理だ。
脳裏には――
御階堂に奪われたあの場面が蘇る。
煌の"男"の顔が蘇る。
僕に皹が入った。