ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「結界を作れない君は、気高き獅子の役に立てない。
ならば必要とする俺らの処に来てよ。
必要とされたいんでしょう、君」
見透かすような青い瞳。
意味ありげな笑いは、僕の劣等感を煽る。
「由香チャン……しぶとくてねえ。直前でプログラム、パスワードかけて止めちゃったんだ。どうしたって口割らなくてさ」
「彼女に……手を出したのか!!」
だから、携帯が繋がらなかったのか。
「あははは。今は中途半端な状態でね。呪詛が本来の力を発揮しない。これじゃあただの共食い倒れ。中途半端は、俺のお姫様が許さないからね。
不出来な弟子の責任、師匠が責任とってよ。
それ、常識だよね?」
「非常識な氷皇に、言われたくない!!!」
何処までも僕は辛らつに撥ね付ける。
「そんなこと言わないでさ。君なら彼女のセキュリティくらい突破できるでしょ?
必要なんだよ、君が」
酷薄な笑い。
垣間見える狂気に、僕は思わず身震いする。
その時――
「芹……霞…」
櫂が芹霞の名を呼びながら、床に崩れ落ちた。
熱に浮かされ、意識朦朧としている。
「あらあら~、ずいぶん具合悪そうだね、気高き獅子は。今なら……」
僕よりも早く、氷皇の足が動き――
「うっ!!」
櫂の顎を蹴り上げ、
櫂は簡単に壁に叩きつけられた。
僕の制した手ごと、脅威の脚力で。