ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「そ。顔はいいけど性格は最悪。いつも女を侍らせて、いい気になってる軽薄男だ。去年同じクラスでよ、ちょっとつるんでいた時期があったんだ」
――篠山亜利栖って割といいと思わね?
「つーか、あいつの周りにはいなかったからよ、物静かな優等生タイプって。それであいつ面白半分に手を出したんだ。そしたら」
――あの女、イカれてる。
「隼人を付き纏うようになってよ、毎日数分おきにメールやら電話が来たり、勝手に合鍵作って、部屋で料理して待ってたり。隼人参ってさ、そこであいつ、幼馴染だという3人に相談したらしいんだ。そしたらそいつら、あの女を輪姦して写真まで撮ったらしいんだ」
「……非道」
私は顔を歪めた。
「だろ? つーか、隼人の家って金持ちだから、当然その幼馴染の奴らも家柄がよろしくて。警視総監、有名弁護士、政界の首領の息子揃いでさ……結局一切お咎めなし。つーか、奴らマジで顔だけはいいから、女を玩具にして覚醒剤(シャブ)漬けにしたこともあったらしいぜ。完全確信犯だ。まあ、そんなこんなんでよ、結局あの女は隼人から離れていったんだけど、ある時、偶然渋谷であの女を見かけたらしい」
私は目を細めて、続きを促す。
「隼人も一応罪悪感もあるからよ、気になってこっそり篠山亜利栖の後をつけたらしいんだ。そしたら……ええとなんて言ったっけ、渋谷の煉瓦造りの私立高……」
「……桐夏?」
「そうそう、トウカ。あの制服を着た男を付回していたらしいぜ?」
誰を追っていたのだろう。
「ひ弱そうな男で、他校のガラ悪い男らにカツアゲされていたんだってよ。それを止めたのが桐夏の気の強そうな女で、篠山亜利栖はその女を影から激しく睨みつけていたらしい。つーか、完全嫉妬だな、それ」
――私は、選ばれた種族なの。
「今年入ってからだ。あの女がいやに高飛車な態度で、怪しげな本を堂々と持ち歩くようになったの。ひ弱な男とどうなったのかなんて知らねえけど、隼人も厄介な女に手を出したよ。だから"今そうなっている"のは、ある意味当然の報いかもな」