ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

「邪魔すんなァ、道化師ッッツ!!」


叫んだのは完全にキレてしまった桜ちゃんで。


煌は地面に崩れ落ちている。



「芹霞ちゃんよー、この漆黒の鬼雷の相手してこいつ静めるからよ、お前、そこで意識失った飼い犬の面倒見てくれや」


「……は!?」



「ぎゃはははは。仕方がねえんだよ、一度眠らせた制裁者(アリス)の邪眼が、あの女の血染め石(ブラッドストーン)の力で再び目覚めたというのなら、完全暴走する前にあいつを制さねえと。

あの水槽がない以上、お前の中の血染め石との相殺力に賭けてみなければ、あいつはこのままだと完全に自我を失い、制裁者(アリス)の本来の姿に戻ってしまう」


「血染め石……?」


過去何度か聞いたことあるけれど、そんなものは知らない。


「仕方がねえんだよ、

紅皇に頭下げられちゃあな」


紅皇。


陽斗は――

紅皇っていう人に会ったのか。


しかも頭下げて、紅皇は陽斗に何を頼んだんだろう。


「こっち忙しいから、そいつを頼む。

……ちッ、さすがにすげえな、こいつは」


爆風が吹き荒れる中、桜ちゃんとの戦いは始まっているようだ。


「いいか、すぐ終わらせろよ。幾ら紅皇の頼みだろうと、お前が飲み込まれそうなら、俺その飼い犬をすぐ裂いてやるからな!! 全てはお前次第だからな!!」


まったく意味不明な言葉と共に、ぽーんと煌の巨体が降ってきた。


あたしは苦しげに目を閉じている煌を見つめ、放心した。


一体あたしに――

どうしろと?






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