ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
"今そうなっている"
その含みある言い方に、
「…… 隼人さん、どうかされたんですか?」
そう聞くと、マモルは声を潜めて言った。
「最近調子悪そうにしてたんだけどよ、今日体育で急に倒れて意識不明。隼人、結構あの女にびびってたから、精神的のものなのか、風邪拗(こじ)らせただけなのか。最近風邪が流行っているのか、休みも多かったしな。
呪いなら容赦ねえよ、あの女。由紀とだって仲良かったはずなのに。なあ、実?」
「ああ、確か両親は海外滞在、家にはあの女1人。しかも養女で、生き別れた『ヒカゲミツル』っていう弟がいるとか……由紀があいつと仲良かった去年始め、可哀想とか本当に心配してたんだよ」
実は、遠い目をしながら呟いた。
その時、実の携帯のアラームがなった。
「悪い、桜ちゃん。もうそろそろ学校行かないと俺達やばい。本当はサボりたいけど、現国出ないと教師がうるせーんだ」
そして帰り際、実が言った。
「あの女、最近は放課後や休み時間、電算室に篭っていたらしいぜ。その時携帯も開いてにやにや笑っていたらしい。あの電波女、お約束だよな、マジ超キモ……」
2人の男子生徒は去っていった。
篠山亜利栖の交遊関係。
篠山亜利栖の生い立ち。
とりあえずは、紫堂が知りえた情報を一度無に返した方がいい。
生の声と違いすぎる。
公的な書類は、『実子』なのに彼女が『養女』と言っていた理由。
公のものを改竄出来るとなれば、かなりの大きい組織が背景にいるのか。
そして桐夏にいるかも知れない、弟。
『ヒカゲミツル』
人伝で、初めてその存在が知れたとは。
篠山亜利栖が養女で、篠山家に入ったというのなら。
本当の苗字は――
「ヒカゲ……?」
私は…目を細め、
膝に居るテディベアを抱きしめた。
「まさか…あの、緋影?」
なんだかとても――
嫌な予感がした。