ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
├飼い犬の言い訳
煌Side
***************
夢を――
見ているのだと思ったんだ。
もし俺が、櫂のような立ち位置で。
誰に遠慮することなく…
我武者羅に芹霞を抱けたのなら。
堂々と芹霞に想いを告げられたのなら。
甘美で陶然とした夢だと思った。
そしてどこまでも悪い夢。
どこまでも心がどろどろとした悪意に満たされ、俺の押さえ込んだ欲望だけが溢れ出す。
本能を突き動かす…情動。
俺は崇めるべき櫂に歯向かい、
嫉妬心丸出しで睨み付けた。
それはもう…気持ちいいくらいに、どろどろとした感情を露にして。
どうやって芹霞を手にしてやろうか。
――流されないで、煌。
時々、本当に夢か判らなくなったけど、
――真実と虚偽の区別くらい、できるでしょ?
俺の戸惑いを見透かしたような芹霞を、
――うるせえよっ!!
抱きしめた身体は熱さを孕んで。
ありえない。
芹霞の心臓がこんなに早いなんて。
ああ、やっぱり夢だ。
すげえ嬉しい俺の夢だ。
桜の衝撃に光が飛んだ。
そして思う。
俺は、夢の中の夢にいたのだと。
現実であるならば、夢の延長線に世界は構成されないだろう。
どこまでも違和感なく紡がれ続ける世界に、これも夢の中なのだと俺は急に陽気になって。
覚めることがない夢に嬉しくなって。
夢だから許されると、
体を動かしながら邪な想いばかりを考えて。
膨れ上がる邪念に――
俺は溺れたんだ。
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夢を――
見ているのだと思ったんだ。
もし俺が、櫂のような立ち位置で。
誰に遠慮することなく…
我武者羅に芹霞を抱けたのなら。
堂々と芹霞に想いを告げられたのなら。
甘美で陶然とした夢だと思った。
そしてどこまでも悪い夢。
どこまでも心がどろどろとした悪意に満たされ、俺の押さえ込んだ欲望だけが溢れ出す。
本能を突き動かす…情動。
俺は崇めるべき櫂に歯向かい、
嫉妬心丸出しで睨み付けた。
それはもう…気持ちいいくらいに、どろどろとした感情を露にして。
どうやって芹霞を手にしてやろうか。
――流されないで、煌。
時々、本当に夢か判らなくなったけど、
――真実と虚偽の区別くらい、できるでしょ?
俺の戸惑いを見透かしたような芹霞を、
――うるせえよっ!!
抱きしめた身体は熱さを孕んで。
ありえない。
芹霞の心臓がこんなに早いなんて。
ああ、やっぱり夢だ。
すげえ嬉しい俺の夢だ。
桜の衝撃に光が飛んだ。
そして思う。
俺は、夢の中の夢にいたのだと。
現実であるならば、夢の延長線に世界は構成されないだろう。
どこまでも違和感なく紡がれ続ける世界に、これも夢の中なのだと俺は急に陽気になって。
覚めることがない夢に嬉しくなって。
夢だから許されると、
体を動かしながら邪な想いばかりを考えて。
膨れ上がる邪念に――
俺は溺れたんだ。