ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
芹霞にとってみれば、とんでもねえ男だろうけれど。
だけど…
開放した俺の想いを、
なかったことにはさせたくなかったんだ。
滾(たぎ)る芹霞への想いを、
否定したくなかったんだ。
幻にも冗談にも出来ねえんだよ。
この想いだけは。
エゴだと判っている。
自分勝手な俺の言い分。
非難当然の俺の言い訳。
芹霞に…理解されるわけねえ。
当然、芹霞に殴られた。
女とは思えねえ、その拳。
だけどよ、怒れる芹霞の顔が、少しだけ――
赤かったんだ。
照れたように、顔をすっとそらせるその様に。
無意識かもしれねえけど。
俺は思ってしまう。
少しでも、俺の入れる隙間があるのかなって。
少しでも、効果はあったのかなって。
もし、1mm程でも隙間があるのなら。
俺、お前を諦めたくねえ。
やばいくらい、お前に惚れているから。
本当に…欲しくてたまらねえんだ。
櫂との仲違いは本当らしい。
正直――複雑だ。
だけど普通に考えて、きっとこの阿呆タレが、大ボケかましたんだろう。