ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


芹霞が俺に聞いた。


「あんた、香水女にいつもあんなことしてるの?」


身から出た錆かもしれねえが、

好きな女に詰られるのはかなり痛い。


本当はもっとすげえことしているけれど、そんなことは口が裂けても言えやしねえ。


思わずどもっていると、


「煌って、口上手いんだね」


目をそらしたまま。


「口って……ちゅうのこと?」


普通に訊いただけなのに、


「ち、違う!! 

あんたの口説き文句の方!!」


芹霞は真っ赤な顔だ。


口説き文句……。


想いに流されていたから、何口走っていたかは正直記憶がねえや。


ただ…求める心がままに。


はっきり記憶に残るのは…

芹霞の感触だけ。


まだ…お前の熱が体に燻っている。


「俺、ちゅうは初だから」


俺には俺の拘りがある。


軽薄だと罵られる行為をしていても、俺の心は香水女には与える気はねえ。


芹霞が好きだと自覚した今となっては、キスだけは避けたその無意識さに、俺の心はかなり昔から正直だったのだと笑ってしまうけど。


「初!!? それであんな!?」


芹霞は驚いた目を少しだけ潤ませた。


そこにあるのは――甘さの余韻。


それが判った俺の顔は、きっと腑抜けているだろう。


なんだか、すげえ嬉しい。

まだ引き摺って貰えるのが、すげえ嬉しい。

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