ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
├王子様の追跡
櫂Side
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嫌な予感がしたんだ。
だから朝から芹霞に小姑のようにくどくどと。
恒例といえば恒例だけれど。
煌なんて欠伸をしていたけれど。
"1人で歩くな"
"俺(か煌)を従わせろ"
――うんうん。
お前まで、何故欠伸をする、芹霞。
どうして斜め上を見ている。
聞いているのかな、
……聞いてないだろうな。
俺だって嫌だよ、こんな役目。
俺はお前の保護者じゃない。
とにかく、お前という存在には必ず俺が隣に立つものだと…
要するに――
それを頭に刻みこませないと、
お前はふらふら飛んでいくだろう?
別に尻軽女と責めている訳ではない。
むしろ、恋愛気質になって欲しい、俺限定で。
ああ、俺は――
警戒心ないお前に、"虫"が付け入る隙を与えて貰いたくないだけ。
自覚して貰いたいだけだ。
お前には俺がいるのだと。
今芹霞に特定の男が居ないのは、芹霞が恋愛に興味がないからではなく、俺という特定の男が居るから、他に目が向かないのだと…
ああ、そう言って貰えたのなら。
俺は喜んで、周囲に宣言するだろう。
"芹霞は俺の女だ、手を出すな"
と。
ああ、12年間だ。
12年も何故、俺の想いは届かない?
12年も何故、ここまで憂慮しないといけない?
――はい、父上。約束します。
何で…ここまで鈍感なんだ、芹霞は。
もういい加減…いいだろう?
判るだろう?
判りやすいだろう、俺は。
言葉で出せない分、態度で示しているのに。
お前以外、皆気づいているはずなのに。
そう、お前以外…。