ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
あの時。
録画されているなんて気づくはずもなく。
気づいても何も出来やしなかったけれど。
録画されていたとしたら、
玲くんの手にかかれば再現は可能だ。
「玲くん、やめてってばッ!!!」
何が嬉しくて、自分のラブシーンを玲くんと鑑賞しないといけないんだ。
あたしは身を捩り、映像を背にして玲くんと向かい合わせになり、慌ててその双肩をわさわさと揺らす。
玲くんは揺さぶられたままで、依然睨み付けるような冷たい鳶色の瞳で、大画面のあたし達を見続けている。
大画面。
大音量。
あたしの全身から羞恥の火が噴いている。
マグマ並だ。
このまま溶けて無くなりたい。
だけど…無くならない現実。
やめて、お願いやめて。
こんな羞恥プレイ耐えられない!!!
「玲くんッ!!!」
ブツッ――。
大画面から突如映像が消えた。
片手を伸ばした玲くんが、何かキーを押したらしい。
あたしは大量に流れた汗を拭う。
「………はぁっ……」
出たのは…乱れた呼吸。
ひとまず…危機は過ぎ去った。
――と思っていた。
「ねえ芹霞……」
酷く抑揚のない、不気味な声。
「君は……
――…誰が好きなの?」
痛いほど、まっすぐな鳶色の瞳が向けられる。
「どうして君は……
痕ばかりつけられるの?
そうやって…」
痕?
玲くんの目線を追えば、あたしの首筋。
「!!!!?」
あたしははっとして手で隠す。
いつの間にやら、陽斗につけられた絆創膏もない首筋。
ひいいいいいっ!!!?
これは誰の!!?
どいつのだ!!!?
その時だったんだ。
あたしの唇に…
暖かいものが触れたのは。