ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「!!!」
玲くんの唇が――
あたしの唇に押し付けられていた。
信じられない心境に、石のように固まるあたしから…玲くんは唇を離した。
冷ややかで…だけど熱い、鳶色の瞳。
ゆらゆらと…揺れている。
訴えるように…詰るように。
「陽斗といれば陽斗に。櫂といれば櫂に。煌といれば煌に。
それなのになぜ僕だけ――不公平だよね」
ゆっくりと…顔を寄せてくる。
「僕相手なら…こんなものを見せつけても何ともないと…、僕なら平気でいられるとでも…思ってた?」
掠れきった声音が、耳元に響いて広がり…そして、
「平気なわけ……ないだろ?」
向けられたぎらついた鳶色の瞳は、直ぐに伏せられ…首筋にちくりと痛みがした。
熱い感触が、存在感を誇張する。
玲くんの…激情を。
「ん……」
それは…留まる処を知らず。
悩ましげな吐息を漏らして、尚も首に吸い付かれる。
ゆっくりと…強く…。
そしてその痕を、肌の深層に塗り込むかのように…舌で舐め上げたんだ。
淫猥な…舌の動きで。