ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├警護団長の焦燥

 桜Side
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朽ち果てる寸前の、廃ビルの地下。


目に拡がるのは――

迷路のように入り組む長い廊下。


陽光が届かぬこの地下に、艶やかな大理石で作られた道があるなど、誰が予想出来るだろうか。


人目に付かぬ処で、こんなに大金を注ぎ込んだ馬鹿げた者がいると、誰が考えられるだろうか。


この道のどれかは…

元老院の間に繋がる。


しかし、容易には行き着かせない。


錯綜させる為の迷路。


氷皇は元老院は移動中で、この先には居ないと告げたが、あの男の言うことを真に受けてはいけない。


何処にどんな罠が仕掛けられているか判らない。


この迷路は、元老院の間だけではなく、途中…東京の要所要所にも繋がっている。


いわば東京の…地下道であり、裏街道とでもいうものだ。


この地下全体は核シェルターに覆われていて、元老院の部屋には有り余るほどの食料と水と大金があると聞く。


東京に万が一のことがあっても十分に対応出来る。

それを知っているのは、元老院をよく知り…その恩恵を被れる者達のみ。


それ以外は、どんな悲惨な状況であろうとも、一切を関知されず招かれることのない…言うなれば、此処は元老院の為だけの地下の楽園。


欲と金に目に眩んだ亡者達が集う、そんな地下の迷宮だ。
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