ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
――そんなものの在処を教えられたからと…誰が喜ぶか。つまり紫堂は…元老院の犬と、公然に認められているっていうことだろうが。
以前、櫂様が嘲笑していたのを思い出す。
今、元老院が不在であるというのに、そんな場所を通って櫂様を連れるのは、些(いささ)か躊躇(ためら)いはあったが、
それでも…地上で共食いを始めて、何かを引き起こそうとする…血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の傍に置くよりは、遙かにマシにも思えたのだ。
元老院の影がある場所には、必ず何らかの結界…守護がある。
五皇が対策を講じているはずで。
だとすれば、この地下に血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)は現われない。
今、私達はそれを逆手に利用していたのだ。
藤姫は、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を用いて、何をしようとしているのだろう。
遠坂由香の告げた3時はもう過ぎている。
櫂様の変調はそのせいか?
しかし、私の直感は告げる。
血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)を道具とする惨劇は、まだ起きていないのではないかと。
何か狂いでも生じたのか。
もしくは遠坂由香がプログラムを止められたのか。
玲様は遠坂由香と連絡がつかないと言っていた。
もしかすると彼女は、
「捕まった…のか?」
だとすれば、頼りになるのは玲様で。
その玲様は、消えてしまった。
玲様…。
一体どうなされたんですか?
ご無事ですか?
桜は…何だか不安なんです…。