ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「非情と謳われたお前のヒステリー見てるのも愉快だけどよー、生憎俺はこんな処に留まる気の長さ、持ち合わせてねえんだわ」


ゆらり、と金色が身体を動かす。


「元より俺は、お前ら助ける義理は何もねえ。俺達が協力しあうのは、芹霞の声を戻す為だ。

元に戻ったのなら、俺は好き勝手にやらせて貰う」


「お前こんな時に……何言ってんだよ!?」


馬鹿蜜柑が、慌てた声を出した。


「BR002。お前の主が紫堂櫂であるなら、俺の主は芹霞なんだ。

主の一大事に、犬が駆けつけないでどうするよ、ぎゃはははは」


ああ、感に障る笑い声。


「お前も主替えするなら来ればいい。そこの鬼雷は、意地でも紫堂櫂の傍から離れないようだがな。

いっとくが、ここが安全だとは思わない方が良い」


陽斗は、私達に背を向けた。

金髪が…揺れる。


「待てよ、陽斗ッッ!!!」


煌が陽斗の手を掴んだ。


「強力な援軍――…

居るじゃねえか、そこに。


悔しいが…

俺はその足下にも及ばねえ」


そして。




陽斗が指差した先――





「まだ私の気配も掴めぬか、


――…馬鹿犬めが」




緋狭様――紅皇が居たんだ。



そして――


陽斗の姿は消えていた。



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