ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「なあ、緋狭姉。
何で玲の守護石操れるんだ?」
煌が訊いた。
「守護石の使い方を歴代の紫堂と、警護団に教えたのは私だ。私が扱えなくして、どう教えられるというのだ。こんなもの、紫堂の力なくとも修練で扱える。現にお前だって使えているだろう?」
振り返りもせず、紅皇は言った。
「だがな、扱えない守護石が1つある」
紅皇はすくっと立ち上がり、こちらを向いた。
「それは――
血染め石(ブラッドストーン)。
……坊の守護石だ」
私は目を細めた。
「闇を支配出来る血染め石。主である坊の潜在能力は凄まじかった。生誕時に力分配させる紫堂の因習に則(のっと)るも、それでも尚当主の力を凌駕する事実を恐れた当主は、守護石を2つにした。
1つは因習通り坊へ。そして1つは当主から……元老院へ。
それが全ての発端だ」
そして紅皇は艶然と笑い、後方を振り返る。
「懐かしかろう、
なあ――坊?」
紅皇の後ろには――
「薄れた記憶です」
櫂様が立っていた。