ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├お姫様の懇願

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あたしの中での玲くんは、いつもにこにことして優しげに微笑んで、例え隠れSの片鱗が見えても、奥底の真情をぐっと堪える人。


玲くんが時折見せる哀しげな表情に、辛そうな表情にあたしは心を締め付けられ、いつか"玲くん"らしく生きて欲しいと思っていた。


玲くんの存在を、櫂の影に隠したままではいけない。

儚げなまま、終わらせてはいけない。


そう思っていたのは、あたしだけではないはずだ。


優しい玲くん。

綺麗な玲くん。


あたしにとって玲くんはお日様のようにぽかぽかして、にっこりほっこり安らぎを与えてくれる人。


それは"異性"を超えた信頼感で。


櫂が頼る程の存在だから、

あたしは無条件で受け入れた。


"男"であるという認識以前に、"紫堂玲"そのものを。


男だから。

女だから。


そんな差別めいた区分けは必要ない。


紫堂玲である限り、

玲くんが女だろうと関係ない。


あたしは紫堂玲が好きなのだから。


それは言葉に出さずとも、

玲くんには伝わっていると思っていた。


玲くんはあたしをとても可愛がってくれたから。


櫂を大切にするように、

あたしも大切にしてくれたから。

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