ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~




『芹霞? 連絡は来てないけど……は? 紫堂の人工衛星で芹霞の位置を探せ? 櫂?』


玲の裏返った声が聞こえた。


『ま、まずは友達の弥生ちゃん。動向について何か知ってるかも知れないから連絡……』


「そんな名も知らない女の連絡先など、この俺が知るわけないだろうが!」


『そ、そうだよね。判った。何とか僕調べて、連絡とって見るから。一回切るよ?』


俺の返答待たずに玲は電話を切った。


休憩時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。


当然俺は授業に戻らない。

それは煌も同じ考えのようだ。

煌は煌なりに、どうすべきか考えているようだ。


深く深く、そして――…


「うおおおお」


ショートしたようだ。


煌は携帯電話というものを持たない。

持たせたところで機械というものと相性が悪いのか、すぐ壊してしまう。


一応、その都度壊れていない携帯を渡してはいるのだが、きっと今ここでそれを使うという選択肢は思いついていないに違いない。



その時、俺の携帯が鳴った。

玲からだ。


『やっぱり弥生ちゃんと一緒に居た。櫂に電話かけてって言付け頼んだから……』


ぶちっ。


俺は玲の言葉が終わらない内に電話を切る。


その直後、再び着信音。


芹霞からだ。


『あ、もしも…「なんで、電源切ってるんだ! なんのための携帯だ、お前は学習能力がないのか!!!?」


『え、あ、ご、ごめんなさい……』


無事な声を耳にした途端、

俺の精神は徐々に安定を取り戻す。


よかった…無事だ…。
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