ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「機械従事者としては、そう出来る環境があれば一興だったろうけれど、残念ながら無効化出来ていない。だから血色の薔薇の痣(ブラッデイ・ローズ)の制御の為だけに作ったゲームの疑似プログラムを改良し、別個にあったそれらを1つに統合した。
そしてそれに連動しているはずの最終呪詛プログラムに、統合プログラムから解呪の擬似コードを忍ばせ、内部からの改変を試みた。
ただそれには暫しの時間がかかる。それが完了した時、通知されるのがパスワード画面さ」
玲くんはにっこり笑っている。
「最終呪詛プログラムの効力が遅くなったのも、内部の改変が原因だ。コンピュータウイルスがPCに蔓延した感じだね。
そしてお前達は余力を結界封じに使用してくれた。おかげで抵抗力が弱まり、思ったより早くこの画面にありつけた。
そこから先の操作は由香ちゃんには荷が重過ぎるもの。だけど家から出ている僕は、家並みの環境で続きの操作が出来ない。だから僕達は考えた。ならば僕がその場所に連れて貰おうと」
蒼生は何も言わない。
ただ薄く笑っているようだ。
「最終呪詛プログラムがある場所なら、僕が望むような環境は整っているはずだ。
つまり由香ちゃんはその身に代えて、僕を此処に引きずり出してくれた。せめてもの贖罪だってね。
由香ちゃんが捕まり僕が狩り出されるのは、僕と由香ちゃんにとっては想定内ということだ」
「随分と演技が達者だね」
「達者じゃないと、此処にはこれない。ただ、芹霞もっていうのが想定外だったけど」
玲くんの説明は難しすぎて、その内半分も理解出来なかったけれど。
これだけは判った。
あたしが此処に居るという事実以外は、全ては玲くんの思惑通りだったらしい。