ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
だからこそ――…
「何て危険な! 由香ちゃんだって、玲くんだって、生きているからいいものを!!」
あたしは思わず玲くんを怒ってしまった。
それなのに、何故か玲くんは嬉しそうで。
この緊張感をものともせず、すっとこちらに歩んだかと思うと、
「初めて、僕に怒ってくれたね」
あたしの耳元で囁く吐息のような響きにぞくりとした。
思えば、あたしは今まで玲くんにこんなに怒ったことはなく。
だけど怒ることが嬉しいだなんて、
「僕は、結構"M"だよ?」
またあの色香満載で、間近で微笑まれた。
思わず仰け反った時、嘘臭い仮面をつけて蒼生が訊いた。
「――で、レイクン。君は、パスワード解除のふりをして此処でやってくれていたのは何だい?」
多分、蒼生は判っているのだろう。
此の場で判っていないのは、きっとあたしだけ。
「勿論、ここの電力を僕の守護石に流す為。いくら何でも、15分そこいらで、膨大なプログラムの無効化は出来ないと、此処で実際見て悟ったから。まあ当初はプログラムを潰すつもりだったけどね」
「あははは。だから君は月長石を気高き獅子の元に置いてきたのか。こういう選択もありだと、ハナから思っていた訳か。でも、それだけじゃないんでしょ?」
「さあ。どうでしょう?」
玲くんは、真実をぼかすようににこにこと笑った。