ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「侮れないねえ、君は。影で終わらすには勿体ないよね。あはははは~。何だか、俺…君が気に入っちゃったな~」


「僕は嫌いです」


「言うね~あはははは~。そこまでの意思表示が出来るのならさ、いっそ紫堂を継いだらどうだい、気高き獅子ではなくさ」



次期当主――。


あたしは思ってしまった。


もし玲くんが櫂の立場に成り代わったら、紫堂に必要とされなくなった櫂は、あたしの元に戻ってくれるんじゃないか。


――芹霞ちゃん、だあい好き。


また、あの可愛い櫂に戻ってくれるんじゃないか。


 
だけど――


「ありえないね。次期当主は櫂だ。それは揺るがない」


現実はそうはいかなくて。


「勿体ない。本当に勿体ない。

あれ~芹霞チャン、何を残念そうな顔してるの? あれ、あれれ? 君は、紫堂を継ぐのは…カイクンじゃなくてレイクンがよかったの? 


レイクンとのキスで――

レイクンを王子様に選んだの?」


蒼生は突然変なことを言い出した。


何馬鹿なことを。


同意を求めた玲くんの顔は――



「……本当!!!?」



またあの"男"の顔で。


どきりとする程、大人びた端麗な顔で。



「君のカイクンは、

用なしになったの?」



嫌でも思い出させられる。


――永遠なんて……俺を殺す気かよ。



痛い。

凄く心が痛い。




「用なしになったのは、あたしの方。もういいでしょう、やめてよ櫂の話は!!」


あたしは蒼生を睨み付ける。


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