ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


少なくとも煌も玲も、彼らの弱さを芹霞はきちんと判っていて、その上であいつらに懐いて大事にしている。


昔ではなく、現在の姿をきちんと認識していている。


確かに俺は、あいつには弱さをひた隠しにして、弱さ自体唾棄してきた。



だけど――


いつまでも芹霞にとっての真実は8年前の俺で。



――櫂が紫堂に行っても寂しくてもずっと我慢していたのにっっ!!! 



俺が現実を見せ付けても、

悲しそうな顔をするだけで。



そんな状況で、俺は芹霞が手に入るのか?


芹霞は俺に靡くのか?



その自信は――どこからくる?



自信……?



俺にとっての強みは何だ?



強みは――

8年前の繋がりだけで。



結局俺は、その残酷な…いばらから抜けられない。



だとしたら。


昔抜きに現在の姿を見て貰える煌や玲の方が、俺よりも芹霞を手に入れやすい立場にいるんじゃないか。



そう思ったら…膨れる嫉妬にますます苦しくなって。



息が出来ない。


何も見えない。



――大丈夫……か?



誰かが何かを言っているけれど、判るのはそれが芹霞ではないということ。


芹霞が俺に手を差し伸べていないということ。


芹霞を失いたくはない。



芹霞。


芹霞。



お前が好きなんだ。


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