ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
どうやら芹霞は、友人の宮原何とかっていう友達に連れられて、池袋の香水(パフューム)店で買い物をしているらしい。
「しかし何で池袋なんだ。
香水(パフューム)の1つや2つ、どこでもあるだろう」
『いや、だって櫂が……といっても櫂じゃない櫂なんだけど、そこがいいって強請(ねだ)るからさ』
こいつは一体何を言ってるんだ?
『いやでもま、買い物ももう終わったからそっちに戻るね。櫂午前までなんだって?』
「……いや、たった今から強制下校する。これからそっちに行く。いいか、俺が行くまでその友達と一緒にいろよ。見知らぬ男についていくなよ、いいな」
我ながら……なんて狭量なのか。
『う、うん? 何だかよくわからないけど、弥生と一緒にサンシャインシティビルの喫茶店にいるよ。すぐビルだし』
「判った。近く着いたら連絡入れるから、必ず携帯は通じるようにしとけよ」
携帯を切る。
「煌、サンシャインに行くぞ」
「あ、ああ……」
煌は俺の後をひょこひょことついてくる。
本当に大型犬のようだ。
――どうして櫂様はその蜜柑男ばかり。
何度も桜に追及されているが、煌は俺を決して裏切らない自信がある。
煌なら俺の背中を任せてもいい。
だから、紫堂の公的警護団の規則を捻じ曲げてまで、煌を俺付の警護に据え、桜と同じ格を与えた。
それに対して、純粋に紫堂という培養液で育った桜がよく思っていないのはわかる。
決して桜が信用できないというわけではない。
その力は認めるが、煌とは意味合いが違う。
元々煌は、こんな砕けた笑いをする男ではなかった。
子供ながら荒んだ表情で全身刃のような男だった。
狂気に満ちた男だった。
それを変えたのは、
――この馬鹿ワンコ、人参食えッッ!!!
――部屋を片付けろッッ!!!
――喧嘩なら負けないよ!!!
――エロワンコ、お前は昨夜、何処に居た!!!!?
……芹霞だ。
普通に…
自然体で接してきたからこそ。