ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



僕に応えてよ。

僕と狂おうよ。


僕と一緒にどこまでも堕ちようよ。


君の望むことは何でもしてあげるから。


君をもっと悦ばせてあげるから。


――うふふふふ。


僕の何処かで女の笑い声が聞こえていた。


邪魔としか思えなかった。


僕が聞きたいのは芹霞の可愛い声で。

僕の名を呼ぶ、芹霞の可愛い啼き声で。


ああ、こんな可愛い姿は誰にも見せたくはない。


こんなに僕を求める熱い瞳を閉じ込めてしまいたい。



僕のものだ。

僕だけのものだ。


僕がいないと生きていけない身体になってよ。

僕がいないと死んでしまう心を頂戴。


溶け合おうよ。

1つになろうよ。


僕はもう…限界だ。



そんな時――

芹霞の苦しげな声が聞こえて。


目の前には、太股にペンを突き刺した芹霞の姿。


血が流れるその足に。


衝撃を受けている間、僕の理性は欲望を抑え込んだ。


家族愛を主張始めた芹霞に、

僕の心はガタガタ音をたてた。


好きなのに。

こんなに好きなのに。


"男"として意識されていない僕。


耐えきれず、僕の口から出た想いに…


「え!?」


芹霞は困った表情を浮かべて。


許容されない僕の想いは…宙ぶらり。


あまりに切なくて、

あまりに辛くて。


泣きたくてたまらなくなった。


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