ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



嫌だ。

まだ決定的になるのは。


これからだ。

まだこれからじゃないか。


だから僕は冗談めいて笑った。


笑うしかなかったんだ。

号泣しそうな僕を救うには。



――藤姫のせいでしょ?



起因がなんであれ、僕の想いはあったんだ。


愛しくて、君が欲しくてたまらない心は。


あれは事実。

あれは現実。


それをなかったことにしようとする芹霞。


笑い続ける僕の拳は、あまりに強く握りしめすぎて、血が滴っていたのが判った。


まるで…僕の心のようだ。


諦めればいいのかもしれない。

もういい加減、見込みなしだと。


だけど、


――言ってるでしょう。あたしは本当の"玲くん"を解放したいって。


自制する僕ではなく、

理性を無くした"僕"を君が望むというから。


――玲くんが"玲くん"であればいい。


望んでくれるというのなら。


"あんなこと"呼ばわりしたあの蜜な刻を、僕は決して忘れない。


あんな悦楽、忘れることなど出来るものか。

君にも絶対忘れさせやしない。



"あんなこと"にはさせやしない。



意識させてやる。

僕は…"男"なのだと。


少しずつ…僕が。

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