ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「蒼生も陽斗も皆、あたしを指差して血染め石と言うけれど、それは何? 櫂のってどういうこと?」
そんな中、芹霞は…単刀直入に問うていた。
亜利栖の…藤姫の目が、不機嫌そうに細められた。
「嫌な子。本当に嫌な子ね、あなた。亜利栖の記憶で更に気分悪くなるわ。亜利栖の大好きな弟に手を出して、尚且つ紫堂櫂や紫堂玲、私の大好きな玩具達まであなた変えてしまったじゃない」
垣間見えるのは…嫌悪を超えた"憎悪"?
芹霞はそれに気づいているのだろうか。
「亜利栖の弟って……ああ、御階堂? 何であたしが手を出すの? 第一あたし亜利栖と会ったこともないし。大体櫂だろうと玲くんだろうと、煌や陽斗だって、あんたの道具じゃないわよッ!! あたしがどうとかは判らないけれど、人間なんだもの、変わって当然じゃないの!!」
「でも君は。気高き獅子の変貌を受け入れたくないんだよね。君が藤姫を詰る謂われはないんじゃないの、あはははは」
氷皇が堪えきれないというように、笑いながら会話に入ってきた。
「君は人間性を主張するけれど、
そもそも人間って一体何さ?」
「生きているものじゃないの!!」
「血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)だって生きているよ?」
「違うわ。一度命を無くした者は、ただの屍よ!!」
――俺の守護石?
「うふふふふ。
屍が…生者に意見するか、
――…小娘」
――お前にだけ言う。決して口外しないで欲しい。実は……。
「……やめろ」
僕から声が漏れる。
駄目だ。
この会話の流れは駄目だ。
だけど、挑発された芹霞は止まらずに。