ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



「逆じゃないの。生きているあたしが、亜利栖の死んだ身体を持つあんたに意見しているのよッ!! 

きっとあんたはそうやって、他人の身体をのっとってきたのよね。生かされる身は可哀想だけど、だからといって陽斗や煌達にしでかしたことは、言い訳にはならないわッ!!!

あんたに生きている人間を好きにしていい権利はないッ!!

血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)だってそうよッ!!」



「よせ……芹霞」



――芹霞の中には……。



どくん、どくん。


嫌な予感に、僕の心臓は不穏な音を立て始める。


警鐘のように。


「あはははは。無知って愉快だねえ。死んだ人間は、死んだことすら判らないんだもの、血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)のいいサンプルだよね」


「は?」


「やめろ、氷皇。これ以上……」



「判らない? そうだよね、自分のことすら君は気づいていないものね。

君が他人の闇に過敏になって干渉したがるのは、君の中の血染め石が闇に反応しているからさ」



――俺の守護石が入っている。



「氷皇、止めるんだッ!!!」



「君の属性は闇だ。


決して――光じゃない」



――俺の血染め石が芹霞の……。



氷皇は止まらない。



元よりこの男が僕の意見など聞き入れるはずはなく。



だとしたら――。



しかし…


僕が芹霞の両耳を塞ぐより早く、氷皇は言ったんだ。


言ってしまったんだ。



決定的な言葉を。





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