ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~


「玲くん……冗談きついよ? 

もしかして……藤姫? 

あたしか玲くんを…また操ったの!?」


そうであって欲しいと思った。


操られるのは嫌だけど、

今だけは――藤姫に縋りたかった。



だけど――。


「愚かしい小娘。自らが否定した私に頼るのか」


口調を変え、くつくつと笑う。


どうか、どうか。

肯定…してよ!!!


操っていると…笑ってよ。



「私は何もしていない」



残酷な言葉が、あたしの期待を打ち砕く。


嘘だ。

嘘だ。



「したのは紫堂櫂。


血染め石で…

死んだお前を生かした」



藤姫の言葉が、頭でぐわんぐわんと反響する。

 

櫂が――あたしを?



"死んだお前を生かした"



だから櫂は――

あたしとの"永遠"を拒んだというの?



「……嘘」


でもあたし生きているじゃない。


「嘘よそんなの!!!

あたし…騙されないから!!!」


ちゃんと生きている!!!


「玲くんッッ!!!」


あたしは玲くんの腕を引っ張り、揺すぶった。


「玲く……ん、何か言っ…・・てよ。

あたし、死ん…・・でないよ?」



死んでいないと、生きていると。


どんなに心で固く思っても…紡ぐ言葉は乱れて、上手く言葉にならない。


もどかしい。



「芹霞……」


玲くんから返るのは、

哀れんだ声音だけ。


だから…あたし…。


だから――…



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