ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「うああああああ!!!!」
剥離…されていくのは、何なのだろう。
あたしを構成する、過去の思い出が、その欠片が。
ぽろぽろと剥がれ落ちていく。
そして残るのは――
何だと言うの?
今在るあたしは――
一体、何……?
ぐらぐらと…存在意義が崩れていく。
口からは…叫び声しか出てこない。
あたしは――何?
「芹霞!!!」
涙で滲む視界に、玲くんが見えた。
あたしを支えようと伸された手を――
「――っ!!」
あたしは払った。
構わないで。
放って置いて。
あたしは――…。
あたしは!!!!
だけど玲くんは、払われたその手であたしの手を掴み、逃がさないというようにぎゅっと力を入れて引き寄せる。
「君は君だ。それは揺るぎない事実。
僕の目の前の芹霞は、確かに生きて僕に力をくれている。
それ以外に真実はない」
痛いくらい真っ直ぐで真剣な鳶色の瞳が、涙で霞んだ向こう側に見える。
「僕を…信じて」
涙が溢れて止まらない。
そんなあたし達を見て――
「あははははははは」
蒼生の笑い声が響いた。