ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
愉快そうに笑う蒼生の声に、玲くんが食らいつく。
「何がおかしい、氷皇ッ!!」
会いたい。
「うふふふふ」
会いたいよ、櫂。
「何がおかしいんだよ、藤姫ッ!!」
今一度――…
櫂の口から真実を聞きたい。
あたしは、櫂に護られていたの?
今まで――
どんな思いであたしを護ってきたの?
「どうだ、小娘。
生ける屍や血色薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)とお前の違いは何?
制裁者(アリス)の支配を責めるお前が、闇で支配する紫堂櫂をなぜ責めない?」
――芹霞ちゃあああん!
櫂。
――……んじゃいやあああ!!
櫂。
「気高き獅子は、持てる紫堂の力のほとんどを君の"生"の維持に回し、それで尚もあの力。
末恐ろしい…そんな不安愁訴たる存在は、元老院にとって邪魔なだけさ。
そして、いい具合に彼の力を受けて成長している血染め石。それがあれば、藤姫様の望む玩具も大量に作られよう。
壊した後の創造、創造の後の破壊。
その繰り返しで、歴史が紡がれていくのさ。
あははははは」
愉快そうに細められた藍色の瞳。
藍色の中に滲んだ闇色は、
次第にあたしの視界を浸食していく。