ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
次第に…意識が遠のいていく。
――死んじゃいやああ!!
ああ、駄目。
櫂を泣かせては駄目。
大丈夫。
あたしは大丈夫だから。
だから――
そんなに泣かないで?
櫂…。
櫂……。
あたしの…
可愛い櫂…。
薄くなる意識に漏れ聞こえる、緋狭姉の声。
――芹霞、おい芹霞ッ!!
――芹霞ちゃあああん!!
聞こえない。
もう何も聞こえて来ない。
寒い、寒いんだ。
冥(くら)い――
闇の色……。
此処には闇しかない。
絶望の色。
誰も居ない。
櫂は何処?
櫂は泣き止んだ?
あたしだけが残され――
そしてあたしも闇に溶けていく。