ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



次第に…意識が遠のいていく。



――死んじゃいやああ!!



ああ、駄目。

櫂を泣かせては駄目。


大丈夫。


あたしは大丈夫だから。


だから――

そんなに泣かないで?



櫂…。

櫂……。



あたしの…


可愛い櫂…。



薄くなる意識に漏れ聞こえる、緋狭姉の声。



――芹霞、おい芹霞ッ!!


――芹霞ちゃあああん!!


 

聞こえない。


もう何も聞こえて来ない。


寒い、寒いんだ。


冥(くら)い――

闇の色……。


此処には闇しかない。


絶望の色。


誰も居ない。


櫂は何処?


櫂は泣き止んだ?



あたしだけが残され――

そしてあたしも闇に溶けていく。


< 838 / 974 >

この作品をシェア

pagetop