ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
「8年前。
ご両親と芹霞さんを襲ったという制裁者(アリス)は、
――煌ではないんですか?」
ずっと、心に引っかかっていた。
緋狭様によって瀕死状態で保護された馬鹿蜜柑。
どうして彼だけ特別なのかと。
どんな特別な関わり合いがあるのかと。
しかし緋狭様は――
「……気のせいだ」
そう軽く笑うと…
私の頭をくしゃりと撫でた。
「行くぞ、桜」
答えを拒まれれば、私はそれ以上を聞くことが出来ない。
風に靡く橙色の頭を見つめながら、
恐らくは――
私の予想が当たっているのだと、
そしてそれは――
私が明らかにすべきではないことを悟った。
あの馬鹿蜜柑は覚えていないのだろう。
そうすることを緋狭様が望んだのであれば、私は余計な口は挟むべきではない。
そう――
受け入れることにした。